大腸カプセル内視鏡検査を始めました
大腸がんにかかる方は増加の一途をたどっており、2020年には、男性で第2番目に多いがん、女性では第1番目に多いがんになると言われています。また、大腸がんにかかる方は、40歳から高齢になるに従い増加する傾向にあります。そのような状況ですので、日本での大腸検査はますます重要になります。
通常の大腸内視鏡検査(肛門から内視鏡を入れて全大腸を観察する)を行う技術は、私が医師になった今から26年前と現在では雲泥の差が有ります。私が研修医のころは 検査室の外まで内視鏡挿入の痛みのため患者様の叫び声がひびいていると言ったことがありました。しかし、現在では、たとえば私が大腸内視鏡検査を行えば 鎮痛剤や鎮静剤を注射しなくても 我慢できる程度のお腹の違和感・痛みで90%以上の方に無理なく検査を行うことができます。そして 1枚一枚のひだの裏までもしつこいほどに観察し2−3㎜の病変をも発見し 組織検査、必要であれば切除術を行うことができます。大腸内視鏡検査は大腸検査の王道であることに疑う余地はありますん。
「大腸カプセル内視鏡」はカプセル型の内視鏡を、水分と一緒に飲んでいただき消化管を通過しながら、腸管の内部の写真を自動的に撮影していく検査です。大腸がんやポリープの有無を調べるカプセル内視鏡のことです。「大腸カプセル内視鏡」のメリットは「痛みがないこと」「鎮痛剤や鎮静剤がいらないこと」「怖い・恥ずかしいといった精神的負担が少ないこと」が考えられます。
ただし 問題点もあります。①通常の大腸内視鏡検査では少しくらいであればたとえ便が残っていても、洗うことにより観察することができますが カプセル内視鏡は少しでも便が残っていると 便のある部位の観察ができません。したがって 大腸の中をとてもきれいにするため 検査の前日には検査食を食べていただく、さらに検査前日と当日の朝には大量の下剤を飲んでいただく必要があります。②カプセル内視鏡は腸の動き(蠕動といいます)によって食道→胃→十二指腸→小腸→大腸→肛門から排出 されることになります。腸の蠕動には個人差があり、早々に肛門から排出される方から 腸の動きが悪いため検査の予定時間内に排出されない方まであります。いろいろな施設からの報告では 検査の予定時間内にカプセルが排出されるのは全体の80%前後と報告されています。予定時間内にカプセルが排出されなかった20%の方は、カプセルが到達した部位から直腸(肛門のすぐ奥の腸)までの観察ができていないことになり 不完全な検査になってしまうことが最大の問題です。多数の有名な施設がこの問題を解決するために 数々の工夫をされていますが未だ解決されていません。
当院では大腸カプセル内視鏡装置を2014年2月に購入しましたが②の問題が解決できなかったため導入を延期してきました。時間内にカプセルが排出されない方のほとんどは、S状結腸でカプセルが留まっていることが原因であると報告されています。S状結腸は肛門から約20㎝位入ったところであり 通常の内視鏡でS状結腸まで挿入するのは極めて容易です。これらのことから当院では、予定時間内にカプセルが排出されず カプセルがS状結腸に到達していると推測される場合、細径の柔らかい内視鏡(より苦痛が少ないため)を肛門から挿入し、カプセルが留まっている部位から肛門側の腸管を観察することにしました。
では どうして他の施設では「予定時間内にカプセルが排出されない場合に 内視鏡を肛門から挿入し検査を完結させる方法」を行わないのでしょうか? それは現在の健康保険制度に原因があります。大腸カプセル内視鏡検査を健康保険で行った場合、追加で行った大腸内視鏡検査は保険診療では認められないため 病院が損をしてしまうためです。もちろんその他の要因として、「恥ずかしくない」のがカプセル内視鏡の特徴の一つなのに それが損なわれてしまうこともあります。
大腸カプセル内視鏡を希望される方は メールまたは電話で御相談ください。担当は看護師・カプセル内視鏡技師の田邊です。